巻 頭 言

Colum

11月巻頭言

「民主主義的資本主義は生き残れるだろうか」

民主主義のメッカと云われた英国が揺れている。
EUからの脱退の是非をめぐって国民投票をしてから何年たったのだろう。
未だに決着が付かずついに総選挙となった。
民主主義は決めるのに時間がかかるとは云われているが、これは通常の手続上時間がかかる問題ではなく本質的にどこか狂った政治でありもはや民主主義とはいえない状態ではなかろうか。
香港も再び騒いでいる。
学生の求めている民主主義とはあのような暴力で自分達の要求を通すことなのだろうか。
ヨ-ロッパも騒がしい。
ポ-ランド、ハンガリ-そして民主主義の模範生といわれたフランス、ドイツも同様に移民排除の差別を求める民主主義を要求している。
自由の国アメリカは最低である。
民主主義どころか差別主義の坩堝となっている。
民主主義とは自由選挙、言論の自由、法の下の平等、他民族の共存、多様性の承認などを社会的価値として合意し成立する制度である。
今はなんと惨憺たる姿である。
革命は政治行動でありある意味で暴動であり戦争である。
毛沢東は「革命は客を招いてご馳走することでもなければ、文章をねったり、絵をかいたり、刺繍をしたりすることではない。そんなにお上品で、おっとりした、みらびやかな、そんな穏やかで、おとなしく、うやうやしく、つつましく控えめな物ではない。革命は暴動であり、一つの階級が他の階級を打ち倒す激烈な行動である。」
と述べている。
革命をやるなら暴力も戦争もあり得るだろうが、その為には革命の大義名分と行動の明確な指針となによりも人民の幅広い支持が無ければならない。
それなしに行われる行動は単なる暴動であり、平穏に生活している人々にとっては迷惑であり必要ないものである。
今民主主義と称して行われている政治は人類は永い年月6000年もかけて築いてきた民主主義とはとても思えない行動であり、社会の崩壊を促すものである。
このような風潮は何故生まれてきたのか?
米国フリ-ダムハウスによると2018年世界の50ヶ国で民主主義が改善されたが、ハンガリ-など68ヶ国で悪化したと報告している。
また民主主義指標を公表する英国エコノミスト誌の研究機関は2017年の1月に米国は「完全な民主主義国」から「欠陥のある民主主義国」へ格下げしたと日本経済新聞は報じている。
我国も同様で安部政権になってから民主主義は表面の言葉だけで中身は官邸独裁、首相の嘘が平気でまかり通るような国民を馬鹿にした政治が行われており、とても民主国家とは云えない国となっている。
評論家の水野和夫氏は「資本主義の終焉と歴史の危機」という著作のなかで金利(利潤)がゼロになった資本主義はもはや制度として成り立たないと書いている。
また斉藤幸平氏編集「未来への大分岐」資本主義の終わりか、人間の終焉か」の中でマイケルハ-ト、マルクスガブリエル、ポ-ルメイソン氏との対話を行っているが、要は今の資本主義がもはや崩壊しておりどのようにしても、このままでは再生不可能であると書いている。
また情報テクノロジ-時代にはAIやビックデ-タによって資本主義が死んでいくと述べている。
世界が直面している自然破壊の原因は資本による自然からの収奪によるもので、結局資本は人類の滅亡を促進していることにある。
マルクスは晩年書いた自然科学ノ-トによると「利潤の最大化を第一目的とする資本主義においては持続可能な地球の管理は不可能だ」と書いている。
現下の結論を言おう。
利潤のみを追求しその利潤源を食い尽くした資本主義は人類が発明し築いてきた民主主義おも食い尽くし、結局人類滅亡へ導く牽引力となっている。
このままこれを放置すれば間違いなく人類は滅びの淵に入り込む事になるだろう。
この危機から何とか逃れようとするなら最後は人類の知恵を結集して社会の仕組を根本から変え経済システムを大変革するしか方法はない。
しかし残された時間は多くない。
今世界各地でこのことを考え多くの人々が活動を始めている。
小さな集団がそれぞれの立場で何とかしようと動き始めている。
ヨ-ロッパで、米国で、アジアで、中近東で公共の富「水や空気や鉱物や農産物や畜産物や電気や川や海を」地域住民で管理する仕組作りに立上がっている。
資本主義に変わる生活の基盤造りに奮闘している。
これが横に連携することによって今までの国境や企業に壁や資本の壁を乗り越えて新しい仕組が出来たとき、現在の危機は乗り越えられるだろう。
理想かもしれない、道は遥かに遠いかもしれない、しかしやらなければ我々人類には滅亡が待っている。

2019.11.18 藤村 明