巻 頭 言

Colum

9月巻頭言

「激動する東アジア」

日韓関係が連日デレビ番組を賑わしている。
何が問題なのか我々国民には良く分からない内に、事態は一層深刻になって来た。
おまけに韓国内の人事問題まで、あたかも日本国内の問題の様に騒がれており、そこまで他国の内政に触れなくても良いのではないかと思う位熱心に報道されている。
何が問題なのか、何故これ程までに問題がこじれているのか?もう少し深く考えてみたい。
WILLと云う雑誌10月号に元駐ウクライナ大使、馬渕 睦夫氏が「日韓を裂く米の国策」なる文章を書いている。
氏の主張は米国の国策として、日本と韓国を分断して日本が再び韓国を支配しない様に、地域の大国として再興させない様にする政策として、様々な方策を講じたのであると書いている。
詳しくは該本を読んで頂ければよいが、何となくうなずける文章である事が分かる。
しかしそれ程両国の政治家がうまく操られるのかと思う点もあり、にわかに信じがたい。
もう一つは米朝の関係の変化である。
昨年暮れから動き出した一連の動きは平昌オリンピックを経て、我々の想像を超えた早さで展開し、日本政府の子供じみたJアラ-トの騒ぎも含めて、大きく変化して来た。
これに呼応する様に韓国の動きも激しく動き、日韓関係に大きく影響している事は事実である。
この動きを見ると韓国は日本との関係よりも、同族である北朝鮮との関係を重視する方向に目下の所、舵を切っている様に思われる。
最近の報道によると、米国は韓国に対して中近東で米国が行おうとしている計画で原発20基の建設に韓国を誘っていると出ていた。
この計画について日本にはお呼びがなかったと云う。
多分お呼びがあっても我国は乗れない状況にあるのだが…
又北朝鮮に対して9月15日の日経新聞に、元自民党副総裁 金丸 信氏の息子金丸 信吾氏を団長とする60人の代表団が9月14日北京経由で北朝鮮に入国し9月19日迄滞在すると云う小さな記事が掲載されていた。
訪朝の目的は故 金丸 信氏の105年の祝祭を行う為との事である。
60人の団は決して少い人数ではない。
動きは活発で表面だけでは分からない水面下の動きが激しくなり、日本はどこまでこれに追い着いているのか分からなくなっている。
今回の内閣改造でも、外務大臣と経産大臣が交代した。
2人共韓国と交渉の表に立っていた人物である。
韓国側はどう反応するのか?
要は日本は海外と貿易をしなければ生きて行けない国であり、特に東アジア諸国・中国・韓国・北朝鮮・ロシアとはどうしても付合って行かねばならない地政学的な位置にある国である。
元伊藤忠商事社長の丹羽宇一郎氏は「戦争の大問題」(東洋経済所新報社刊)で次の様に書いている。
少し長いが引用させて頂く。
「人間関係はギブアンドテイクだ。与えるほうが先で、もらう方は後、(中略)これが良好な人間関係を築く基本である。
先ず取るものを取ってから、それから話し合いだと云う姿勢で交渉が上手く行くはずがない。」
「国家間の関係も同様である。」
戦争とは究極の奪う手段である。日本は武力で奪うと云う手段を永遠に放棄した。
我々から子孫に残すべき遺産は平和的に対立を乗り越えて協調する道だ。
世界各国を協調に導くには、先ず今日の日本が中国や韓国との間の対立を乗り越えてみせなければならない。
好きだ嫌いだを乗り越えて交流を深めることだ。
好きだ嫌いだで止まっている様では到底世界をリ-ドして行く事など出来ないし、逆に世界から見下され存在自体が消えてしまうだろう。
国家間の交流には個人的な好き嫌いは無関係である。
日本はアジア各国と協調してみせることで世界に模範を示す事が出来る。
相手が北朝鮮であっても、いまの段階では協調には時間がかかるが「力対力」ではなく、話し合いの道筋を探ることは継続すべきだ。
日本がアジアで成功すればこそ、世界は日本を注目し尊敬し信頼する。
これが21世紀の日本が採るべき唯一の選択肢である。」
丹羽氏の言葉は正に今の日本の政治家が背筋を伸ばして聴くべき基本的な言葉である。
この様な考え方で接すれば日韓問題も必ず解決出来ると信じるし、そうあるべきである。
東アジアの平和と繁栄は必ずや世界の平和の繁栄に継って行く。
その事を我々は再度、心に刻んで日々歩みをして行きたい。

2019.9.17 藤村 明